柴原廣彌の遺稿 02
005 行軍 背嚢に四日分程度の糧秣を入れ始めは榊原温泉に行軍をし、そこで大衆浴場に入浴 |
006 嫌な銃剣術 P037 稽古の中でも一番嫌なのは銃剣術であり、防具を付けると暑さは一層酷しくなり更 に面を付けると呼吸も苦しくなる。その防具たるやこれでも軍国日本の武器かとあき れる程の古さで破損のひどい物ばかりであり、程度の良いのは下士官や二年兵が付け る物くらいである。 古兵の練習の間をみて補充兵は練習をするが、準備体操をし防具を付けて木銃を持 ち営庭を駈足して体力を付ける。一人当て二年兵に稽古を付けてもらうが基本も何も あったものではない。大略要領を習い無茶苦茶でも突きさえすれば良く、兵が互いに 仕合をし勝った者から面を取って休憩をする。自分は中々勝てず何時も後迄残ってし まうので、相手の不意を突くか変わった方法をとらなければ勝つ事はまずない。円陣 仕合といって防具を付け円陣をつくり、その中で三人が仕合をし勝った者に誰でも掛 かって行き、三人勝ち抜いた者は休めるのだが中々勝ち抜くことは出来ない。自分は 普通の方法では三人に勝ち抜くことは到底出来ないので一計を案じ、まだ仕合の準備 も意志も出来ていない近くの相手の者に不意に直突きをし、続いて横にいる者にも不 意に直突きして勝ち抜き、おかげで三人を抜いたので休めた事があった。皆は唯茫然 としていたが、渡辺伍長は「円陣仕合時ならばこれで良いのだ」と逆に誉められた。 嫌な銃剣術は二年兵が稽古をしている掛声まで「イヤダーイヤダー」と聞こえてき て、また防具の下に着る肌着というのが上着の古い物で袖が無いのや背中半分無いの とか、よくもまあこんな破れ衣が世の中にあったものだと初年兵は皆驚いた。一見質 素にしているように見えるが、既に日本はこの頃から物資は欠乏していたのだろう。 |
007 衛兵所と面会所 P039 営門には衛兵所があり各中隊が交替で勤務をする。衛兵司令の下士官と歩哨係上等 |
008 外出 日曜ともなれば古兵は皆外出許可を貰って外出をするが、管内といって外出先は久 |
009 不寝番 夜は不寝番と云って中隊内を二人で火災、盗難、兵の寝様等を監視を一時間交替で |
010 入浴 何週間目かに大隊単位で入浴の順番が廻って来る。時間を決めて中隊別に入る事が |
011 酒保 P045 酒保にはぜんざい、あべ川餅、飴巻き等食品のほか日用品を売っていて、酒は日曜 |
012 洗濯 舎前にある洗濯場は隣の中隊と共同使用であり、一ヶ所の打ち抜き井戸から手押し |